一生の短さについて
哲学的な考察はセネカに譲るとして、レイ・カーツワイル―加速するテクノロジー (NHK未来への提言)レイ カーツワイル (著), 徳田 英幸 (著)のあとがき(「インタビューを終えて」)の中に次のような興味深い一文がありました。
当時、大学のある先生の話した話の中に、「皆さんがA4サイズの方眼紙を1枚もっているとしましょう。我々が1日無事に暮らしたら1平方ミリを切り取ってみてください。もし、君たちが80歳まで生きるとすると、君の一生を記録するのに何枚の方眼紙がいるでしょうか」という問いがあったのを覚えている。
A4用紙のサイズは、210mm×297mmなので面積は62,370平方ミリです。
もし毎日1平方ミリずつ切り取っていくとすると、一生の間で切り取れるのは
1平方ミリ×365日×80年=29,200平方ミリ
となり、A4用紙の半分も切り取れません。
上の引用文に続けて
なんと自分の一生を記録するのには、紙の半分以下しか必要ないのである。その先生は「皆さんの一生は、大変貴重な一生ですから、あまり無駄にしないように」という趣旨のことを言われたのが強く記憶に残っている。まさに、人の命がいかに短いかを可視化させられた瞬間であった。
私も全く同感です。
ところで、1日に1平方ミリを切り取るのではなく、1時間に1平方ミリ、1分間に1平方ミリ、1秒間に1平方ミリを切り取ればどうなるか、また1立方ミリならどうなるか、計算してみます。
切り取り作業に使える時間は、1日あたり16時間としておきます。
1時間に1平方ミリ・1立方ミリ
16時間×365日×80年=467,200平方ミリ=$684^2$平方ミリ=$78^3$立方ミリ
なので、一生を記録するために、用紙であれば約70センチ四方の用紙、3次元の物体であれば一辺の長さが約8センチの物体が必要となります。
1分間に1平方ミリ・1立方ミリ
60分×16時間×365日×80年=28,032,000平方ミリ=$5,295^2$平方ミリ=$304^3$立方ミリ
なので、一生を記録するために、用紙であれば約5メートル四方の用紙、3次元の物体であれば一辺の長さが約30センチの物体が必要となります。
1秒間に1平方ミリ・1立方ミリ
60秒×60分×16時間×365日×80年=1,681,920,000平方ミリ=$41,011^2$平方ミリ=$1189^3$立方ミリ
なので、一生を記録するために、用紙であれば約41メートル四方の用紙、3次元の物体であれば一辺の長さが約120センチの物体が必要となります。
一生の間、休むまもなく毎秒毎秒1立方ミリずつ削っていったとしても、一辺が1メートルちょっとの物体しか削り切ることができないというのは個人的には意外でした。